仮差押え
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債権回収の流れと仮差押の手続の位置づけ

会社経営や店舗経営をしていると、債権回収の悩みがつきません。。

「商品を売ったのに支払いをしてくれない。」
「工事をしたのに支払いをしてくれない。」

このような債権回収に関するトラブルは、会社経営にはつきものであり、もっとも相談の多い内容の一つです。

 

債権回収の回収率アップのためには、スピード対応が必要となりますが、最初に以下の方法が効果的です。

「弁護士から債務者宛てに内容証明郵便を送って、支払いを督促する。」

しかし、それでも支払いをしないという場合は、債務者に対して訴訟に進まなければなりません。
このようなケースで、訴訟の前に強力な手段の一つとして「仮差押」という手続きがあります。「仮差押」は、訴訟の前に債務者の財産を凍結してしまい、処分できなくする手続きです。

 

仮差押とは本裁判前に債務者が財産を処分することを禁止するため民事保全手続きです。仮差押は債務者の財産処分を禁止することで強制執行前に財産が散逸してしまうことを回避するために行われます。

仮差押えの効果について

訴訟で勝訴=債権回収成功ではない

訴訟で勝訴すれば、裁判所から債務者に判決正本と呼ばれる文書が送られます。
判決正本の内容は、裁判所が債務者に対して支払いを命じる内容になっています。しかし、訴訟で勝訴した場合でも、債務者にその金額を支払うだけの財産がなければ、債務者としても支払いができません。
その結果、支払いが実行されず、勝訴判決は無駄になってしまう可能性もあります。
このようなことを防ぐために、訴訟を起こす前に、債務者がもっている財産を処分できないように凍結してしまう手続きが「仮差押」です。

勝訴後に債務者に「払えない」とは言わせない仮差押の効果

訴訟の前に「仮差押」の手続きをすることで、勝訴した後になって債務者に「財産がないから払えない」と言わせず、完全に支払いをしてもらうことが可能になります。

財産が処分できなくなる

訴訟による債権回収は、最終的には強制執行により債務者の財産を差し押さえしなければなりません。
しかし、訴訟手続から強制執行を終えるまでには、1年以上の期間を要するのが通常であるため、手続きを終えるまでに、預金口座の残高を抜かれる、不動産の名義を変えられるなど、債務者が財産を処分してしまう可能性があります。この場合、債務者が隠した財産を特定できなければ、強制執行をしても債権回収はできません。そこで、仮差押は、相手方が財産を処分することを禁止し、このような責任財産の散財を回避するのです。仮差押は、スムーズにいけば一週間程度で済ませることができるので、相手方が財産を処分する余裕を与えません。

債務者にプレッシャーをかけられる

仮差押をすることで債務者が弁済に応じることがあります。というのも、債務者は仮差押の処分を受けると、当該財産を処分できなくなり、色々と不都合が生じるためです。
例えば、預金口座を仮差押した場合、仮差押の範囲で預金取引ができなくなりますので、場合によっては預金全部が凍結されてしまう可能性があります。
そのため、仮差押を行えば、債務者との交渉が有利に運ぶことがあります。

仮差押えのデメリットと注意点

申立の手続きは簡単ではない

まず、法律の専門性のない個人にとって、仮差押の手続きは簡単ではありません。
申立の際に、被保全権利の存在や、保全の必要性など、法的根拠に基づき申立の正当性を主張しなければならないからです。
そのため、仮差押を検討している方は、弁護士に依頼することをオススメします。

 

保証金を提供しなければならない

仮差押が完了すると、債権者は訴訟、少額訴訟、支払督促などを介して、債権者の主張が正しいことを本裁判で認めてもらわなければなりません。
この主張が裁判所から認めてもらえなかった場合、債務者は仮差押によって被った損害を債務者へ請求することができます。
そのため債権者は、仮差押をするにあたり、債務者へ発生するかもしれない損害に備えて、法務局へ供託金を提供しなければなりません。

 

債務者が倒産すると仮差押の効果は無くなる

仮差押が認められても、債務者が倒産手続(破産・会社更生・民事再生)に入ってしまえば、仮差押対象財産を含め、同手続内で処理されることになります。仮差押をしていても、手続での優先弁済を主張することはできません。

仮差押えの対象

銀行預金(口座)の仮差押

債務者に銀行預金(口座)があれば、これを「仮差押」することで預金を引き出すことができないようになります。
そして、訴訟で勝訴した後に、債権者は、その銀行から直接預金の支払いをうけることで、債権を回収することができます。
債務者の預金債権を仮差押した場合は、裁判所から銀行に仮差押決定書を送達して、銀行が債務者に対して預金の支払いをすることを禁止します。
これにより、債務者は預金を引き出すことができなくなります。

 

不動産の仮差押

債務者に不動産があるのであれば、これを仮差押することで債務者が不動産の名義を移転したり、新しく担保に入れたりすることができないようになります。
そして、訴訟で勝訴した後に、債権者は不動産を競売にかけて、その代金から債権を回収することができます。
この「仮差押の執行」は、仮差押をした財産について、裁判所の決定に基づき、実際にその処分を禁止するための手続きです。
不動産の仮差押の場合は、債務者の不動産に仮差押をしたことを示す登記をします。これにより、債務者はその不動産の名義を移転することができなくなります。

 

債権の仮差押

債務者に取引上の債権があれば、これを「仮差押」することで、債務者はその債権について支払いを受けることができなくなります。

仮差押の流れ

裁判所への申立

仮差押の手続きは、裁判所に「仮差押申立書」を郵送することからスタートします。
申立書には、下記のような書類を添付します。

仮差押の申立書に添付する書類
(1)請求債権目録
(2)債権の仮差押の場合は、仮差押債権目録、不動産の仮差押の場合は、物件目録
(3)債権があることを示すための資料(「疎明資料」)
ア 回収する債権に関する契約書
売買代金の回収であれば売買契約書
請負代金の回収であれば請負契約書
イ 債権の額がわかる書類 
発注書と発注請書
債権額が記載された個別契約書
債務残高確認書
分割払いの合意書

(4)債権者が法人の場合は、債権者の資格証明書
(5)債務者が法人の場合は、債務者の資格証明書
(6)債務者の本社所在地の登記簿謄本
(7)保全の必要性についての債権者の陳述書
下記のような内容を記載します。
ア債権の期限がすでに過ぎており、支払いが遅れていること
イ債権者から債務者に何度も督促をしていること
ウ督促に対する債務者の対応状況
エ現在も債務者が支払いをしていないこと
オ債務者の資金繰りの悪化をうかがわせるような事情があればその事情
カ債務者の財産を訴訟の前に仮差押の手続きをしておかなければ、訴訟で勝訴しても支払われない恐れがあること

(8)弁護士に委任する場合は委任状

 

また、申立費用として、収入印紙代と郵券切手代がかかりますが、印紙は申立書に貼り付けてください。
収入印紙代(手数料):2,000円
郵券切手代:債務者の数×1,082円+(1,130円+280円+512円+82円)×第三債務者数

 

裁判所での審理

申立が完了すると、書面審理または、裁判官との面接を介して、申立人の主張の正当性を確かめるための証拠調べをします。書面審理は、申立書と疎明資料を元に行われます。仮差押の手続きは、債務者に内密で行われるため、債務者へ尋問は行われません。
裁判所への申し立てをすると、裁判官が仮差押の可否を審理します。
具体的に、審理の対象となるのは(1)請求債権の有無、(2)保全の必要性です。

 

担保の供託

「裁判所での審理」をクリアすれば、裁判官から、仮差押の決定の前に担保として納めなければならない担保金の額が伝えられます。
債権者は決定された担保の額を法務局に供託します。裁判所は法務局の供託証明書で債権者が担保を供託したことを確認します。
裁判所から担保の額が伝えられてから、通常は7日以内に供託しなければなりませんので、資金を事前に確保しておくことが必要です。
担保金の相場は債務者へ請求する額の2割~3割を目安に考えてください。
供託が完了したら、供託が完了したことを裁判所に証明するために、供託書のコピー・当事者目録・請求債権目録・物件目録・登記権利者・義務者目録・登録免許税用の収入印紙を提出しなければなりません。
収入印紙の金額は、債権額の0.4%(1,000円未満は切り捨て)です。
※1,000円未満は切り捨て。印紙額が1,000円未満の場合は1,000円。

 

仮差押の決定

「担保の供託」が済めば、裁判所が「仮差押の決定」を出します。仮差押が無事完了すると、債務者へ仮差押決定が送られます。仮差押は、民事訴訟で債権者の請求内容について白黒つける前に行われますが、債務者は、裁判所に対し、本案(本裁判)の訴えを提起することを命じるよう申し立てることができます。当該申立てがあれば、債権者は裁判所が指定する一定期間内に訴えを提起する必要があり、訴えを提起しない場合保全命令は取り消されます。

 

仮差押の執行

「仮差押の決定」が出れば、これをもとに「仮差押の執行」に移ります。

 

「仮差押の執行」が終わってから、裁判所が仮差押決定書を債務者に送達します。
この段階ではじめて債務者は自分の財産について、仮差押がされたことを知ることになります。

仮差押の手続きを進める際の注意点

(1)弁護士が裁判所で追加資料を指示されたら、すぐに準備できるように、仮差押の手続中は、弁護士とスムーズに連絡をとれるようにしておく。
(2)裁判所で追加資料を指示されたら、スムーズに資料を提出できるように、仮差押をする債権についての資料の原本を整理しておく。
(3)担保の供託を指示されたらすぐに出金できるように資金を事前に確保しておく。
(4)仮差押の手続きを進めていることを債務者に知られると、債務者が仮差押の決定が出る前に預金を下ろしてしまったり、不動産の名義を移転してしまう恐れがあり、仮差押の手続きが終わるまでは、秘密にしておくことも忘れない。

仮差押の際に事前に検討しておくべきランキング

債権を証明できる証拠があるかを確認すること

仮差押の手続きでは、裁判所に、債権者が主張する金額の債権が、「実際に存在する」ことの証拠を提出することが必要です。
売買代金の回収の場合:
債権者が主張する額の売買代金債権が、「実際に存在する」ことの証拠を提出することが必要です。
請負代金の回収の場合:
債権者が主張する額の請負代金債権が、「実際に存在する」ことの証拠を提出することが必要です。
契約書が作られておらず、債権の金額についても証拠がないという場合は、まずは、下記のような資料を揃えることから始めなければなりません。

(1)回収する債権に関する契約書
・売買代金の回収であれば売買契約書
・請負代金の回収であれば請負契約書
(2)債権の額がわかる書類
・発注書と発注請書
・債権額が記載された個別契約書
・債務残高確認書
・分割払いの合意書

 

 

裁判所に預ける担保を確保することが必要

仮差押の手続きをするには、裁判所に「担保」を預ける必要があります。
これは、裁判所が「仮差押の決定」をしたものの、後で債権者が敗訴した場合に備えて、債務者が「仮差押の決定」により被る損害の賠償にあてるための一定額を、予め「担保」として債権者に預けさせるものです。
「担保」の金額は裁判所が決定しますが、目安として、仮差押をしようとして請求する債権の額の「約10%から30%」程度になります。
「担保」は、原則として仮差押をした後に、債権者側が債務者に対して訴訟を起こし、訴訟で勝訴したあとに、裁判所から返金されることになります。
つまり、訴訟期間中は、ずっと担保を裁判所に預けておかなければならないのです。
訴訟は長い場合には1年以上必要となりますので、その期間、担保として預けたお金は他の用途には使えません。このように、仮差押にあたっては、現金を担保として裁判所に預けることになりますので、そのための資金を確保することが必要です。

 

 

訴訟にかかる期間や費用を検討しておくことが必要

仮差押をした後は、以下のような流れになり、通常は訴訟に進むことが必要になります。
1,仮差押
2,訴訟
3,勝訴判決
4,回収
このように、仮差押をした後は、通常は訴訟を起こさなければなりません。
そのため、訴訟までを踏まえて、必要な期間や弁護士費用を予め検討しておく必要があります。

 

 

仮差押の申立をする裁判所を確認することが必要

仮差押の申立をどこの裁判所に出せばよいのかを確認しておくことが必要です。
通常は債権者側の所在地を管轄する裁判所で申し立てが可能ですが、回収する債権に関する契約書で債務者側の所在地を管轄する裁判所を合意管轄裁判所として規定している場合は、債務者側の所在地を管轄する裁判所で申立をしなければならないこともあります。

 

 

債務者の本社が所在する不動産の登記簿謄本を取得することが必要

仮差押を申し立てると、裁判所から、債務者の本社が所在する建物の登記簿謄本の提出を求められます。
そして、債務者の本社が所在する不動産が債務者の自己所有の場合は、裁判所は債権の仮差押は認めず、不動産の仮差押に切り替えるように指示してくることがほとんどです。
これは、債権の仮差押をすると、債務者は取引先に仮差押をされたことを知られて大きなダメージを受けることがありますので、「債務者所有の不動産があれば、まず不動産を仮差押するように」という裁判所の配慮によるものです。
そのため、もし債権の仮差押を検討している場合は、特に早めに登記簿謄本を取得し、債務者の本社が所在する不動産の所有名義を確認する必要があります。
そして、債務者の本社が所在する不動産が債務者名義の場合は、申立の内容を不動産の仮差押に切り替える必要がありますので、覚えておきましょう。

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